賃金からの控除

中国で従業員が損害を生じさせた場合、企業は賃金から直接控除できるか

会社のパソコンの破損や操作ミスによる損害を受け、本社が中国の給与担当部門に直ちに全額を控除するよう指示することがあります。しかし、損害賠償請求の根拠と賃金控除の適法性は、別々に検討する必要があります。本稿は、中国本土の使用者による通常の雇用関係を対象としています。給与明細を変更する前に、誰が損害を負担すべきか、どの金額を立証できるか、どの賃金支払規則が適用されるかを確認してください。

1. まず損害と従業員の責任を立証する

「賃金支払暫定規定」(労部発〔1994〕489号)第16条は、労働者本人に起因して使用者に経済的損失が生じた場合について、労働契約の定めに従った賠償請求を認めています。請求書が1枚あることや管理職がそう判断したことだけでは、従業員が全額を賠償すべきことの証明にはなりません。現地で適用される責任認定の基準も踏まえ、職務上の義務、具体的な作為または不作為、故意・過失、因果関係、契約上の根拠を確認する必要があります。

資産の引渡記録、指示や研修の記録、事故・事象の記録、従業員の説明、修理の評価資料、実際の支払資料を保管します。該当する場合は、減価償却、回収済みの金額、保険金、損害の発生に対する使用者自身の関与も確認してください。代替品の新規購入価格、顧客からの請求額、社内で損失処理した金額が、そのまま従業員に請求できる損害額になるわけではありません。また、実際に損害を被ったのが中国の雇用主体なのか、別のグループ会社なのかを特定する必要があります。本社からのグループ内費用請求だけでは、従業員の債務を立証できません。

2. 実損の賠償と規律違反に対する罰金を区別する

ミスのたびに課す定額の支払を「賠償」と呼び替えても、それだけで適法になるわけではありません。労働契約法第25条は、従業員が負担する契約上の違約金を、第22条および第23条に定める、所定の要件を満たす研修に伴う勤務継続期間や競業避止の取り決めに関する場合に限定しています。これらの例外は、操作ミスについて広く違約金を定める権限を企業に与えるものではありません。実際の損害に対する賠償請求には、それ自体の事実上・法律上の根拠が必要です。

従業員ハンドブックの条項も、労働契約法第4条に照らして検討する必要があります。従業員の利益に直接関わる規則については、従業員による討議、協議、公示または通知の手続を確認します。ハンドブックの受領確認に署名があっても、違法な条項が有効になったり、特定の損害が立証されたりするわけではありません。深圳では、現行の賃金支払条例第34条から、旧版にあった規律違反に対する経済的制裁の項目が削除されています。古い公式ウェブページに掲載されたその文言を、現在の給与控除の指示にそのまま転用してはなりません。

3. 月ごとの上限と最低賃金の保護を確認する

全国規定である「賃金支払暫定規定」第16条によれば、1か月に控除する損害賠償額は、従業員の当月賃金の20%を超えてはなりません。控除後の残額も、現地で適用される月額最低賃金の基準を満たす必要があります。これらは控除方法に対する制限であり、賠償責任の成立を証明するものでも、当然に20%を控除できることを意味するものでもありません。控除額の計算前に、賃金の構成、適法な賃金算定基礎額、就労地に適用される規則を確認してください。

計算例として、適用される当月の賃金算定基礎額が人民元10000元の場合、この全国規定による20%の上限は2000元です。損害額が20000元であることを立証できても、当月賃金から全額を一括控除する根拠にはなりません。最低賃金の保護により、控除額をさらに少なくする必要もあります。この例は、賠償責任と賃金算定基礎額が既に適法に確定していることを前提としています。いずれかの都市の現行最低賃金額を示すものでも、すべての特殊な賃金計算期間に共通する計算方法を示すものでもありません。

4. 控除の都度、現地の通知要件を確認する

地方の規則は別途確認する必要があります。「深圳市従業員賃金支払条例」(2025年改正)第34条は、従業員に起因する経済的損失について毎月控除を行う前に書面で通知し、控除後の賃金残額を同市の最低賃金基準以上に保つことを求めています。第15条は、控除項目等を記載した賃金支払表の作成と従業員への給与明細の交付を求め、支払表を少なくとも3年間保存するよう定めています。その文言は全国規定の第16条と完全に同じではないため、控除を承認する前に、現地での適用と両規定の関係を確認する必要があります。割合の明記がないことを、無制限の控除が許されるという意味に解釈してはなりません。

実務上、通知書には、発生した事象、裏付けとなる証拠、請求する損害額、責任の判断、予定する毎月の控除額と控除後の賃金を記載し、異議を申し立てる方法を示すことが望まれます。交付・到達と回答の記録も保管してください。書面による通知は双方の合意と同じではなく、従業員の同意があっても、強行的な保護規定に違反する控除が有効になるわけではありません。債務や法的根拠について争いが残る場合は、適法に賃金を支払いながら、交渉または適切な紛争解決手続を検討する必要があります。

5. 賃金の支払と損害の回収を分けて進める

労働契約法第30条は、契約の定めと国の規定に従い、労働報酬を遅滞なく全額支払うことを求めています。社内調査や未解決の賠償請求があることだけで、この義務が停止するわけではなく、従業員の退職時も同様です。第85条は、労働行政部門が期限を定めて支払を命じ、その期限までに支払われない場合に、支払うべき金額の50%~100%の賠償金を追加で支払うことを定めています。この追加賠償責任には適用条件があり、控除に関する争いのたびに自動的に生じるものではありません。そのため、債務確認書や退職合意書に基づいて最終給与の支払を留保しようとする場合は、事前に適法性を検討する必要があります。

給与計算の締めまでに、労働契約、関連する規程とその制定手続の記録、損害の証拠、責任の分析、給与の計算、通知、従業員からの異議をそろえます。企業からの初回のお問い合わせでは、中国の雇用主体、都市、発生した事象、争いのある金額、次回の給与支払日について、機密情報を含まない概要のみをお知らせください。そのうえで、控除に根拠があるか、どの手続と制限が適用されるか、損害の回収を別途進めるべきかを検討できます。法律相談は中国語と英語で対応しています。

法的根拠

公式法源 · 確認日:2026-10-19。翻訳は参考用であり、公式の法文ではありません。

中国本土に関する一般的な情報です。事実、適用時期、現地の規則については個別の検討が必要です。

潘建兴
潘建兴

北京市長安法律事務所パートナー
2019年から中国で弁護士業務に従事 · 北京・深圳

予定している賃金控除を検討する

控除を実施する前に、損害の証拠、適用される地方規則、給与計算を確認します。

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