人事記録と個人情報

中国の従業員から人事記録の提供を求められた場合、使用者は何を提供すべきか

従業員または退職者から、人事ファイル、勤怠履歴、人事評価記録の提供を求められた場合、使用者は請求の対象となる個人情報を特定し、必要性に見合った本人確認を行い、適時に回答できるよう手配する必要があります。資料を社内文書と呼ぶだけでは問題は解決しません。一方、共有フォルダ全体をそのまま転送すると、他人の情報を漏えいさせるおそれがあります。

1. 行使されている権利を確認する

「中華人民共和国個人情報保護法」(PIPL)第45条は、同条に定める例外を除き、本人が自己の個人情報を閲覧・複写する権利を認めています。第4条は、電子的な方法その他の方法で記録された、識別された、または識別可能な自然人に関する情報を対象とし、匿名化された情報を除外しています。そのため、検討対象には紙媒体と電子媒体の人事記録の双方が含まれ得ます。退職したこと自体によって、使用者が引き続き処理している個人情報に関するこれらの権利が失われるわけではありません。

「人事ファイル」という名称だけではなく、実際に請求されている情報を出発点とします。自己の個人情報を閲覧する権利があるからといって、本人に言及したすべての会社文書を無制限に複写できるとは限りません。本稿は、使用者が保有する通常の人事情報を対象としています。専用の管理制度の下で管理される人事档案については、適用される档案管理規則を別途検討する必要があります。独立した文書交付義務も確認します。例えば、「中華人民共和国労働契約法」第16条は、使用者と労働者がそれぞれ労働契約書を1部ずつ保有することを定めています。

2. 不合理な障壁を設けずに本人確認を行う

請求内容、受領日、連絡経路、担当者を記録します。適切な場合には、既存の信頼できる連絡経路を使って確認します。代理人からの請求については、身元と代理権を確認します。個人情報保護法第6条および第51条に基づき、本人確認は必要な範囲で、安全に行う必要があります。本人への介入がより少ない方法で十分に確認できる場合、身分証明書の新たな写し、顔のスキャン、無関係な情報を一律に求めてはいけません。特に従業員の業務用アカウントが停止されている場合には、安全な送付先を確認します。

「ネットワークデータ安全管理条例」第23条は、個人情報に関する権利行使の請求を適時に受け付け、利用しやすい方法と経路を提供することを求め、合理的な請求を制限する不合理な条件の設定を禁じています。日付、システム、記録の種類を明確にすることは情報の所在確認に役立ちますが、内容を把握できる請求を無視する理由にしてはいけません。訴訟戦略の説明、苦情の撤回、包括的な権利放棄書への署名を閲覧の条件にしてはいけません。

3. 人事記録を実際に保有する部門・事業者を横断して調べる

人事、給与、勤怠、人事評価、および請求に対応する情報を保有する事業部門にまたがる関連記録の所在を整理します。関連するメールや調査資料は、実際の内容に基づいて判断し、社内資料であるという理由だけで、その種類全体を対象から除外しないようにします。どの主体が処理の目的と方法を決定しているのかを確認します。グループ会社や給与計算の委託先が記録を保管しているという事実だけでは、誰が回答義務を負うのかは決まりません。

委託処理の場合、個人情報保護法第21条および第59条は、相応の取決めを行い、受託者が個人情報処理者の法定義務の履行を支援することを求めています。合意した安全な手順に従い、委託先に関連情報の検索または出力を依頼します。複数の主体が処理の目的と方法を共同で決定する場合、第20条は、内部の役割分担が、本人によるいずれかの共同処理者に対する権利行使を妨げないことを明確にしています。検索の経過と実際に確認できなかった情報を記録し、記録を捏造したり、未処理の請求を妨げるために情報を削除したりしてはいけません。国外の本社に人事ファイルを共有する前には、国外からのアクセスに関する取扱いを別途検討します。

4. 混在する情報を分離し、拒否の根拠を検討する

給与一覧表には請求者の給与と同僚の銀行情報が併記されている場合があり、人事評価資料には請求者への評価と他人に関する無関係な情報が混在している場合があります。他人の情報を保護しつつ、範囲を限定した写し、抜粋、またはマスキングによって、請求者の個人情報を実質的に提供できるかを検討します。個人情報保護法第51条は、不正なアクセスや漏えいを防ぐ保護措置を求めています。マスキングは具体的な権益を保護するために行うものであり、回答の内容を理解できなくするものであってはなりません。

第45条は、第18条第1項および第35条の例外を明示的に引用しています。これらは、法律・行政法規により秘密保持または告知不要とされる場合、および国家機関による職務遂行に関する場面を対象としており、一般の企業が保有する機密性のある人事ファイルについて、包括的な適用除外を設けるものではありません。提供しない情報については具体的な法的根拠を特定し、第50条に従って理由を説明します。労働紛争が存在すること自体は、閲覧を全面的に拒否する例外事由にはなりません。裁判または仲裁手続における証拠提出義務も別途検討する必要があります。

5. 速やかに回答し、検証可能な記録を残す

個人情報保護法第45条は適時の提供を求め、第50条は利用しやすい請求の受付・処理の仕組みを求めています。「ネットワークデータ安全管理条例」第23条も適時の受付を求めています。これらの条文は、使用者に対するすべての請求について、一律に30日間の回答期限を定めているわけではありません。適用される特別な規則や既存の約束を確認し、社内の処理目標を定め、遅延が生じた場合には適時に上位の担当者へ対応を求めます。進捗の通知は、実際の情報提供や法的根拠のある回答に代わるものではありません。拒否する場合は理由とその後の連絡先を説明します。第50条は、請求が拒否された場合、本人が法に従って人民法院に訴えを提起できることを定めています。

請求内容、必要性に見合った本人確認の記録、システムごとの情報の所在、検索記録、提供した版、マスキングまたは拒否の理由、交付の証拠を保存します。訂正や削除の請求は、個人情報保護法第46~47条に基づいて別途検討する必要があります。正確性に争いのある情報を確認し、削除の要件と、法定保存期間が満了していない場合または技術的に削除が困難な場合の例外を検討します。初回相談では、雇用主体、都市、請求された記録、予定する回答について、機密情報を含まない概要を提示してください。弁護士相談の対応言語は中国語と英語です。

法的根拠

公式法源 · 確認日:2026-10-28。翻訳は参考用であり、公式の法文ではありません。

中国本土に関する一般的な情報です。事実、適用時期、現地の規則については個別の検討が必要です。

潘建兴
潘建兴

北京市長安法律事務所パートナー
2019年から中国で弁護士業務に従事 · 北京・深圳

従業員からの人事情報の請求を検討する

人事記録を提供する前に、請求の範囲、情報の保有者、マスキングの内容、および予定する回答を検討します。

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