給与の過払いの回収

中国で給与を払い過ぎた場合、企業はどのように確認し、返還を求めるべきか

二重振込や給与入力の誤りにより、中国の従業員に本来支払うべき額を超える金銭が振り込まれることがあります。経理部門は、その差額を翌月の給与から直ちに控除したいと考えるかもしれません。まず返還債務の有無と金額を確認し、そのうえで適法な回収方法を選ぶ必要があります。社内の会計処理を修正しただけでは、従業員の返還義務は立証されません。

1. 実際に過払いがあったことを立証する

同じ期間の労働契約、承認済みの給与変更、賞与・歩合給の支給条件、勤怠記録、給与計算表、給与明細および銀行の振込記録を一つずつ照合します。二重払いと報酬を受け取る権利の有無をめぐる争いは、区別して扱う必要があります。従業員が法令や契約に基づいて正当に取得した賞与、承認済みの手当、法定休暇中の給与は、管理者が後になって反対したからといって過払いになるものではありません。

中国の使用者、実際の支払者、受取人、支払日および計算上の誤りを明確にします。グループ会社が別の法人に代わって支払っていた場合は、誰が返還を請求できるかをさらに検討する必要があります。本来の支払額、実際の支払額および差額に法律上の根拠がない理由を示す照合表を作成します。原記録を保存し、過去の給与記録を修正後の給与表で置き換えないようにしてください。

2. 返還請求の根拠と受取人の認識・利得の状況を確認する

「中華人民共和国民法典」第985条は、法律上の根拠なく利益を得た者に対し、損失を受けた者がその返還を請求できると定めています。ただし、道徳上の義務を履行するための給付、弁済期前の債務の弁済、および給付義務がないことを知りながら行った債務の弁済は例外とされています。企業は実際に誤りがあったことを立証する必要があり、意図して行った支払を単に誤払いと呼び換えるだけでは足りません。

第986条の返還義務の例外が適用されるには、受益者が法律上の根拠の欠如を知らず、かつ知るべきでもなかったことに加え、取得した利益が既に存在しないことが必要です。「お金は使ってしまった」と述べるだけで、当然にこれらの要件を満たすわけではありません。第987条により、法律上の根拠がないことを知っていた、または知るべきであった受益者に対しては、利益の返還と法に基づく損害賠償を請求できる場合があります。相手方の認識および請求する損害を裏付ける証拠を保存し、利息が当然に認められることや全額を回収できることを前提としてはいけません。

3. 税引前額、実際の受取額および返還方法を整理する

従業員に明確な計算表を提示し、争いのある項目について説明を求めます。給与帳簿上の税引前額、実際の入金額、源泉徴収された税額および社会保険料を区別します。必要な修正は、給与と税務の専門担当者と調整してください。説明のない税引前総額の返還を求めながら、その税金や社会保険料に当たる部分を別の経路でも重複して回収してはいけません。一方、従業員の銀行口座への手取入金額だけで、すべての会計上の問題が解決するとも限りません。

金額について合意できた場合は、対象期間、計算方法、返還先となる主体、分割払いを行う場合の条件、および給与明細・税務記録の修正方法を書面で明確にします。確認済みの会社口座を使用し、返還を受けたら受領証を発行します。返還の取決めは、通常の給与や無関係の請求と区別して扱います。合意書に署名しても、賃金保護の強行規定は排除されず、予定する給与控除がすべて適法になるわけではありません。

4. 20%の規則を一般的な給与控除の根拠にしない

「中華人民共和国労働契約法」第30条は、労働報酬を期日どおりに全額支払うことを求めています。「賃金支払暫定規定」第15条は、不法な賃金控除を禁止し、控除が認められる項目を列挙しています。第16条は、従業員本人の事由によって生じた経済的損失について、労働契約の定めに基づき賠償を求める場合を対象とし、月ごとの控除について20%の上限と、控除後の賃金が現地の最低賃金を下回らないという保障を設けています。これらの条件を、企業自身の給与計算上の誤りに当然に適用することはできません。

「民法典」第568条も相殺に要件を設けており、債務の性質、当事者間の合意または法律の規定により相殺できない債務を除外しています。その後の給与や退職時の給与を減額する前に、債務、適用される現地の賃金規則および具体的な実施方法を確認してください。返還請求の根拠に争いが残る場合は、適法に賃金を支払い続けながら別途回収を求めることで、新たな賃金支払紛争を避けられます。従業員が争いのある債務を認めないこと自体は、当然に労働契約の解除事由となるものではありません。

5. 証拠を保存し、適切な請求手続を選ぶ

紛争が労働契約の履行に関するものか、独立した民事上の返還請求かによって、手続と時効の判断が変わります。「中華人民共和国労働紛争調停仲裁法」第2条・第5条は、対象となる労働紛争の範囲と仲裁手続を定めています。申立ての前に、実際の事実関係と現地の管轄実務を踏まえて判断してください。請求に「不当利得」という名称を付けるだけで、労働仲裁を経ずに済むわけではありません。

対象となる労働紛争では、第27条により仲裁申立ての時効は原則として1年です。通常の民事請求では、「民法典」第188条により、別段の特則がない限り原則として3年です。それぞれに対応する起算、中止および中断の規則が適用されます。第27条が定める、労働関係の存続中に従業員が未払報酬を請求する場合の特則は、企業による過払いの返還請求に当然に適用されるものではありません。照合表、原資料、従業員の回答および送達記録を速やかに整理し、次の給与支払周期まで待つことなく、手続と期限を確認してください。

法的根拠

公式法源 · 確認日:2026-11-02。翻訳は参考用であり、公式の法文ではありません。

中国本土に関する一般的な情報です。事実、適用時期、現地の規則については個別の検討が必要です。

潘建兴
潘建兴

北京市長安法律事務所パートナー
2019年から中国で弁護士業務に従事 · 北京・深圳

給与から控除する前に、過払いの回収方法を確認する

初回の連絡では、中国の使用者、勤務都市、支払日、争いのある金額および次回の給与支払日をお知らせください。利益相反と対応範囲を確認した後、計算表、給与明細、支払証拠およびやり取りの記録を安全に共有する方法を取り決めます。

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